関西電力事件
(最三小判 H7.9.5)
使用者の不法行為(一般の不法行為)
責任が問われた裁判例
- 事案の概要
- 勤務先Yの従業員であったXらが、Yが、Xらが特定の政党の党員又はその同調者であることのみを理由とし、その職制等を通じて、職場の内外でXらを継続的に監視したり、Xらと接触等をしないよう他の従業員に働きかけたり、Xらを尾行したり、ロッカー等を無断で開けて私物の写真撮影をしたといった行為は、不法行為にあたると主張して、Yに対し、慰謝料等の賠償等を請求した事案である。第一審は一部認容し、第二審は、第一審判決を支持したため、Yが上告した。
- 結果
- 上告棄却。
- 判旨の概要
- Yは、Xらにおいて現実には企業秩序を破壊し混乱させるなどのおそれがあるとは認められないにもかかわらず、Xらが特定の政党の党員又はその同調者であることのみを理由とし、その職制等を通じて、職場の内外でXらを継続的に監視する態勢を採った上、Xらが極左分子であるとか、Yの経営方針に非協力的な者であるなどとその思想を非難して、Xらとの接触、交際をしないよう他の従業員に働きかけ、その過程の中で、X1及びX2については、退社後同人らを尾行したりし、特にX2については、ロッカーを無断で開けて私物を写真に撮影したりしたというのである。
そうであればこれらの行為は、Xらの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また、X2らに対する行為はそのプライバシーを侵害するものであって、同人らの人格的利益を侵害するものというべく、これら一連の行為がYの会社としての方針に基づいて行われたというのであるから、それらは、それぞれYの各Xらに対する不法行為を構成するものといわざるを得ない。原審の判断は、これらと同旨をいうものとして是認することができる。
パワーハラスメントの裁判事例
使用者の不法行為(一般の不法行為)
責任が問われた裁判例
東京地方裁判所 | バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件 東京地裁 平成7年12月4日判決 |
東京高等裁判所 | 松蔭学園事件 東京高裁 平成5年11月12日判決 |
東京地方裁判所 | ティーエムピーワールドワイド事件 東京地裁 平成22年9月14日判決 |
最高裁判所 | 関西電力事件 最高裁判所第三小法廷 平成7年9月5日判決 |
使用者の不法行為(特殊の不法行為:
使用者責任)責任が問われた裁判例
名古屋地方裁判所 | U福祉会事件 名古屋地裁 平成17年4月27日判決 |
横浜地方裁判所 | ダイエー事件 横浜地裁 平成2年5月29日判決 |
使用者の債務不履行責任(安全配慮義務違反)が問われた裁判例
東京高等裁判所 | 川崎市水道局(いじめ自殺)事件 東京高裁 平成15年3月25日判決 |
福岡高等裁判所 | 長崎・海上自衛隊員自殺事件 福岡高裁 平成20年8月25日判決 |
埼玉地方裁判所 | 誠昇会北本共済病院事件 埼玉地裁 平成16年9月24日判決 |
高松高等裁判所 | 前田建設事件 高松高裁 平成21年4月23日判決 |