奈良医大アカデミック
ハラスメント事件
(大阪高判 平14.1.29)

当事者の責任が問われた裁判例

事案の概要
N大学の公衆衛生学教室の助手であったXが、同教室の教授であったY1から、数々の嫌がらせを受け、その人格的利益を侵害されたとして損害賠償を、Y(県)に対して国家賠償法 1 条に基づき、Xの精神的損害及び弁護士費用の賠償を請求するとともに、YはXの雇用者として、働きやすい職場環境を提供すべき雇用契約上の義務があるにもかかわらずこれを尽くさなかったとして、債務不履行に基づき、賠償請求をした。
結果
第一審は請求の一部認容、慰謝料 50 万円及び弁護士費用5万円の支払。
XとY県がそれぞれ控訴し、Xの控訴棄却、Y県の控訴一部変更(慰謝料 10 万円、弁護士費用1万円の支払)。
判旨の概要
Y1が、XのA短期大学の兼業申請に押印しなかったことについて、Y1は、Xから提出された兼業承認申請に記載の時間数が三転したことについて、Xに説明を求めたにもかかわらず、Xがこれに応じなかったためであると主張するが、Xは、同申請の兼業時間が変転したのは講義時間数の減少が原因であることを一応説明しているものと認められ、他方Y1は、いわゆる「リアルスケジュール」(新学期が始まる直前にA短期大学において作成される行事予定表)の持参にこだわって、Xの説明を受け付けなかったものと認められる。

Xによれば、Y1が持参を求めた時点においては、未だ「リアルスケジュール」は作成されていないものであると認められるのであり、そのような書類の提出にこだわって兼業承認申請への押印を拒否するのは合理性をかくものであるのが明らかであり、嫌がらせの要素があると推認できる。

このことによって、Xは同短期大学の講義を休講せざるを得なかったものであり、兼業承認は公権力を行使するY1の職務上の行為というべきであり、Y1の当該行為は国家賠償法上の違法行為である。

パワーハラスメントの裁判事例

使用者の不法行為(一般の不法行為)
責任が問われた裁判例

東京地方裁判所バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件 
東京地裁 平成7年12月4日判決
東京高等裁判所松蔭学園事件 
東京高裁 平成5年11月12日判決
東京地方裁判所ティーエムピーワールドワイド事件 
東京地裁 平成22年9月14日判決
最高裁判所関西電力事件 
最高裁判所第三小法廷 平成7年9月5日判決

使用者の不法行為(特殊の不法行為:
使用者責任)責任が問われた裁判例

名古屋地方裁判所U福祉会事件 
名古屋地裁 平成17年4月27日判決

        
横浜地方裁判所ダイエー事件 
横浜地裁 平成2年5月29日判決
    

使用者の債務不履行責任(安全配慮義務違反)が問われた裁判例

東京高等裁判所川崎市水道局(いじめ自殺)事件     
東京高裁 平成15年3月25日判決
福岡高等裁判所長崎・海上自衛隊員自殺事件 
福岡高裁 平成20年8月25日判決
埼玉地方裁判所誠昇会北本共済病院事件 
埼玉地裁 平成16年9月24日判決
高松高等裁判所前田建設事件 高松高裁 
平成21年4月23日判決

当事者の責任が問われた裁判例

東京高等裁判所
三井住友海上火災保険上司事件
東京高裁 平成17年4月20日判決
     
大阪高等裁判所
奈良医大アカデミックハラスメント事件 
大阪高裁 平成14年1月29日判決

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