誠昇会北本共済病院事件
(さいたま地判 平16.9.24)
使用者の債務不履行責任
(安全配慮義務違反)
が問われた裁判例
- 事案の概要
- 病院Yで勤務するAが、職場の先輩であるY1らのいじめ(Y1の家の掃除、車の洗車、風俗店へ行く際の送迎、「死ねよ」、「殺す」等の発言等)が原因で自殺したとして、両親であるXらが、Yに対し、雇用契約上の安全配慮義務違反による債務不履行責任(民法 415 条)を理由に、Y1に対し、いじめ行為による不法行為責任(民法709 条)を理由に損害賠償を求めた。
- 結果
- Y:Xらに対し慰謝料各 250 万円(Y1との連帯債務)
Y1:Xらに対し慰謝料各 500 万円(各 250 万円の限度でYとの連帯債務)
- 判旨の概要
- Y1は、自ら又は他の男性看護師を通じて、Aに対し、冷やかし・からかい、嘲笑・悪口、他人の前で恥辱・屈辱を与える、たたくなどの暴力等の違法な本件いじめを行ったものと認められるから、民法 709 条に基づき、本件いじめによって A が被った損害を賠償する不法行為責任がある。
Yは、Aに対し、雇用契約に基づき、信義則上、労務を提供する課程において、Aの生命及び身体を危険から保護するように安全配慮義務を尽くす債務を負担していたと解される。Y1らのAに対するいじめは3年近くに及んでいるなど、Yは本件いじめを認識することが可能であったにもかかわらず、これを認識していじめを防止する措置を採らなかった安全配慮義務の債務不履行があったと認めることができる。
パワーハラスメントの裁判事例
使用者の不法行為(一般の不法行為)
責任が問われた裁判例
東京地方裁判所 | バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件 東京地裁 平成7年12月4日判決 |
東京高等裁判所 | 松蔭学園事件 東京高裁 平成5年11月12日判決 |
東京地方裁判所 | ティーエムピーワールドワイド事件 東京地裁 平成22年9月14日判決 |
最高裁判所 | 関西電力事件 最高裁判所第三小法廷 平成7年9月5日判決 |
使用者の不法行為(特殊の不法行為:
使用者責任)責任が問われた裁判例
名古屋地方裁判所 | U福祉会事件 名古屋地裁 平成17年4月27日判決 |
横浜地方裁判所 | ダイエー事件 横浜地裁 平成2年5月29日判決 |
使用者の債務不履行責任(安全配慮義務違反)が問われた裁判例
東京高等裁判所 | 川崎市水道局(いじめ自殺)事件 東京高裁 平成15年3月25日判決 |
福岡高等裁判所 | 長崎・海上自衛隊員自殺事件 福岡高裁 平成20年8月25日判決 |
埼玉地方裁判所 | 誠昇会北本共済病院事件 埼玉地裁 平成16年9月24日判決 |
高松高等裁判所 | 前田建設事件 高松高裁 平成21年4月23日判決 |