報酬の範囲について

厚生年金保険をはじめとした社会保険の取扱いは、法令や通達等により定められていますが、実務を進める上では、その判断に迷うことが少なくありません。日本年金機構より社会保険の取り扱い業務に際して、法令、諸規程等の解釈又は取扱方法が不明確なときに発生する疑義に対して、各年金事務所等から本部に寄せられた内容とその回答が公表されています。社会保険事務において参考になる内容ですので、ポイントを押さえておくことが重要です。疑義照会と回答の内容は、次のとおりです。

文書作成日:2023.05.06

報酬の範囲に ついて

通常、「大入袋」は「臨時に受けるもの」として報酬に含まない取扱いとしていますが、以下の事例についても報酬に含まないとしてよいでしょうか。

【事例】
支払項目 大入袋
支払金額 1万円
給与支払にかかる社内規定なし
賃金台帳記載あり

日本年金機構のホームページでも報酬としない例として「大入袋」の記載がありますが、これは大入袋のもつ本来の性質「1.発生が不定期であること、2.中身が高額でなく、縁起物なので極めて恩恵的要素が強いこと」からすると生計にあてられる実質的収入とは言い難く、報酬及び賞与としないとしています。

厚生年金保険法第3条第1項第3号及び健康保険法第3条第5項で「報酬」とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものはこの限りではない」と規定され、「賞与」に関しても厚生年金保険法第3条第1項第4号及び健康保険法第3条第6項で「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。」と規定されています。

厚生年金保険法第3条1項第3号及び健康保険法第3条第5項における「臨時に受けるもの」とは、昭和23年7月12日保発第1号通知において、「被保険者が常態として受ける報酬以外のもので狭義に解するものとすること」とされており、通常の生計に充てられる収入の性質が報酬であり、臨時的なものは報酬とはなりません。

また、「労働の対償」とは、昭和32年2月21日保文発第1515号からすると被保険者が事業所で労務に服し、その対価として事業主より受ける報酬や利益などをいい、1.過去の労働と将来の労働とを含めた労働の対価 2.事業所に在籍することにより事業主(事業所)より受ける実質的収入と考えられます。

ただし、昭和18年1月27日保発第303号により事業主が恩恵的に支給する見舞金は通常の報酬ではないとされ、結婚祝金や慶弔費なども「報酬」や「賞与」とはなりません。ご照会の事例においては、大入袋の支給原因、条件等が不明なため、臨時的であるかの判断ができず、報酬かどうかの一律な判断はできません。仮に臨時的であれば、金額の大小に関係なく、報酬としない取扱いが妥当となります。臨時的かどうかの判断は、支給事由の発生、原因が不確定なものであり、極めて狭義に解するものとすることとされていますので、例年支給されていないか、支払われる時期が決まっていないかで判断してください。

次に、臨時的でないとすれば、報酬又は賞与となるのか判断することになりますが、前述したように事業主が恩恵的に支給するものは報酬又は賞与から除かれます。恩恵的かどうかの判断は、社会通念上での判断となりますが、ご照会の事例は(大入袋に関しては)、賃金台帳に記載があること、金額が1万円であること、これに加え、支給事由が業績達成や営業成績に連動しているものであれば、本来の大入袋のもつ性質とは異にし、恩恵的ではないと判断するのが妥当となります。

※文書作成日時点での法令及び日本年金機構から公表された内容となっております。<免責事項について>

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