松蔭学園事件
(東京高判 H5.11.12)

使用者の不法行為(一般の不法行為)
責任が問われた裁判例

事案の概要
学校法人Yの設置する高等学校の教諭であるXが、それまで担当していた学科の授業、クラス担任等一切の仕事を外された上、何らの仕事も与えられないまま4年半にわたって別室に隔離され、さらに7年近くにわたって自宅研修をさせられ、年度末一時金の支給停止等の差別的取扱いをされているのは不法行為である等として慰謝料の支払いを求めた。
結果
請求の一部認容。慰謝料 600 万円(初審は慰謝料 400 万円)。
判旨の概要
YがXに対し、仕事外し、職員室内隔離、自宅研修という過酷な処遇を行い、さらに賃金等の差別をしてきた原因については、Xが二度にわたって産休をとったこと及びその後の態度が気にくわないという多分に感情的な校長の嫌悪感に端を発し、その後些細なことについての行き違いから、Y側が感情に走った言動に出て、執拗とも思える程始末書の提出をXに要求し続け、これにXが応じなかったため依怙地になったことにあると認められるのであって、その経過において、Xのとった態度にも反省すべき点がなかったわけではないが、この点を考慮しても、Yの行った言動あるいは業務命令等を正当づける理由とはならず、その行為は、業務命令権の濫用として違法、無効であることは明らかであって、Yの責任はきわめて重大である。

このような行為により長年何らの仕事も与えられずに、職員室内で一日中机の前に座っていることを強要されたり、他の教職員からも隔絶されてきたばかりではなく、自宅研修の名目で職場からも完全に排除され、かつ、賃金も昭和 54 年のまま据え置かれ、一時金は一切支給されず、物心両面にわたって重大な不利益を受けてきたものであり、Xの精神的苦痛は誠に甚大であると認められる。

Yは、民法 709 条、 710 条、 715 条、に基づき、その不法行為によってXが被った損害を賠償すべき義務があるところ、Xの精神的苦痛を慰謝すべき賠償額は、本件一連の措置を一体の不法行為として全体的に評価・算定すべきであり、Yの責任の重大さにかんがみると金 600 万円をもって相当とする。

パワーハラスメントの裁判事例

使用者の不法行為(一般の不法行為)
責任が問われた裁判例

東京地方裁判所バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件 
東京地裁 平成7年12月4日判決
東京高等裁判所松蔭学園事件 
東京高裁 平成5年11月12日判決
東京地方裁判所ティーエムピーワールドワイド事件 
東京地裁 平成22年9月14日判決
最高裁判所関西電力事件 
最高裁判所第三小法廷 平成7年9月5日判決

使用者の不法行為(特殊の不法行為:
使用者責任)責任が問われた裁判例

名古屋地方裁判所U福祉会事件 
名古屋地裁 平成17年4月27日判決

        
横浜地方裁判所ダイエー事件 
横浜地裁 平成2年5月29日判決
    

使用者の債務不履行責任(安全配慮義務違反)が問われた裁判例

東京高等裁判所川崎市水道局(いじめ自殺)事件     
東京高裁 平成15年3月25日判決
福岡高等裁判所長崎・海上自衛隊員自殺事件 
福岡高裁 平成20年8月25日判決
埼玉地方裁判所誠昇会北本共済病院事件 
埼玉地裁 平成16年9月24日判決
高松高等裁判所前田建設事件 高松高裁 
平成21年4月23日判決

当事者の責任が問われた裁判例

東京高等裁判所
三井住友海上火災保険上司事件
東京高裁 平成17年4月20日判決
     
大阪高等裁判所
奈良医大アカデミックハラスメント事件 
大阪高裁 平成14年1月29日判決

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